最安値
裸の王様ではないですか?
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裸の王様になっていませんか?
【判断は、確かな情報だからできること】
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こんにちは、塩梅マンです。
前回は、購買マンであるあなたの存在価値について書きました。
そして、心構えを変えようと言いました。
今回からしばらくは、テーマ毎に話をしていきたいと思います。
今日は【何故、買うのか?】の1回目、です。
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「もしもし、お見積もりをお届けに上がりたいのですが?」
あなたは、突然の電話を受けて商談をセッテイングします。
(商談日)
営業マン:「研究所の柴田さんからのご依頼です。購買部の方にお見積書をお出しするよう言われまして」
あなた:「分かりました。では、説明してください。」
(省略)
営業マン:「お見積書はこのようになります。柴田さんからは納得してもらっている価格になっています。安くしなければいけないと伺っていましたので最終的にこうなりました。いかがでしょうか?」
あなた:「うーん。思ったより高いですねえ。柴田からも安く買ってくれと言われていますからねえ。残念ですが、これじゃあ受けられません。もう一辺、社内で揉んでいただいて、1週間後に再提案ください。」
営業マン:「仕方がありませんね。分かりました。無理だとは思いますが何とかならないかもう一度やってみます。でも、期待はしないで下さいよ」
(その直後)
あなた:「今日、原料Aの見積書が届いたんだけど、これは一体何なんですか?全くの初耳のことなんだけど。しかも、両者で価格までもう煮詰まっていると聞いたけど本当ですか?困るんだよなあ。こんな話が突然来るのは。購買を抜きにして進めてもらっては困るんですよ。これこれが進行中とか、見積書を要求しておいたのでフォローをよろしくとか、あらかじめ基礎的な情報を教えてくれないと。」
柴田:「研究が忙しくて申し訳ありません。連絡を忘れていてごめんなさい。それはそれとして、とにかくうまく見積もりを今週中に取ってくださいよ。所内の会議に間に合わせないといけないので。勿論、安く買うのが購買の仕事なんだからよろしく頼みます。」
あなた:「少し、背景とか、原料の概要とか、いままでの先方との経過とかを教えてくださいよ。・・・」
(1週間後)
営業マン:「社内で徹底的に揉んできました。営業部長を説き伏せて、やっと作った見積書です。これで弊社としては限界です。これで納得してくださいよ」
あなたの陰の声:「しめしめ。5%安くなったか。限界まで詰めてくれたみたいだな。これで研究にも格好がついたし、うちのボスにも無理やり限界まで安くさせたと言えるよな)」
あなた:「えっ?これで限界ですか?もっと下がると踏んでいたんですけど」
営業マン:「本当に、ほんまにギリギリなんです。これ以上にと言われるんでしたらうちとしては降りるしかありません」
あなた:「うーん。思っていたより下がらなかったけど・・・、まあ、あなたの努力と誠意に免じてOKしましょう。でも何年後かに多く購入するようになったらもっと下げて貰わないと」
営業マン:「ありがとうございます。よそさんにも出していないなんせ特価になっていますから自信を持ってください。うちのボスに無理やり納得させた甲斐があると言うもんです。では柴田さんにもよろしくお伝えください」
あなた:「了解しました。あなたの努力をしっかり伝えておきますよ」
(その直後)
あなた:「見積もりをやり直させて、たった今、ギリギリの見積書を貰ったんだ。無理やりに5%下げさせたので、価格は@646円/kgです。しんどかったよ。どこにもない特価なんだから喜んでください。研究部長にもその旨伝えておいてください。ところで、あの営業マン、結構社内で力を認められているようだぜ。有能な営業マンが当たってよかったよ、お互いに」
柴田:「ありがとうございました。これで明日の会議に間に合ったよ。特価とは嬉しいです」
(月例の購買会議にて)
あなた:「研究から要請のあったテーマXEPの新原料Aの値決めは、徹底的な交渉の末、@646円/kgに出来ました。押したり引いたりしてやっと特価を引き出せました。こんな価格はどこにもないそうです」
購買部長:「分かったけど、交渉でどれだけ下げれたんだい?」
あなた:「15%も下げたんです。とにかくなかなかガードが固くて。粘りに粘った結果ですよ。」
購買部長:「研究側ではこの結果をどう言っているのかね?」
あなた:「どこにもない最安値と言うことで喜んで貰えました。やっぱり筋を通して購買に見積を取ってもらったのが正解だったと言っていましたよ」
購買部長:「まさか、見積書が突然舞い込んできて驚いたんじゃないだろうね?」
あなた:「とんでもありません。前々からあのテーマに関する新原料については情報を収集していましたから」
購買部長:「ほうー。なかなか手際よく先回りして進めているじゃないか」
あなた:「開発購買は最も大きなコストダウンだと認識していますから」
購買部長:「今からもしっかり頼むよ。研究部長からもよろしく頼むと言われていたからね」
あなた:「分かりました。これからも積極的に研究側を支援していきます」
購買部長:「よろしくね。みんなもこれを手本に頑張ってくれよ」
他の同僚:「はい。頑張ります」
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(その後)
あなたの影の声:「上手く行ったぜ。研究も感謝してくれたし、うちのボスもできる奴だと思ってくれたようだし・・・」
購買部長の影の声:「15%OFFの、しかもどこにもない特価とは、よく交渉してくれたもんだ。あいつはなかなか出来る奴なんだよなあー。特価なんだから研究部長も評価してくれただろう。うちの購買部はすごいと言って。俺も安心したよ。やれやれ」
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柴田の影の声:「いろいろごたごたはあったけど、聞いていた価格より5%安くなったし、特価だそうだからありがたいこっちゃ。これでコスト試算の精度も高くなったので研究部長からもいちゃもんはつかないはずだ。やれやれ」
研究部長の影の声:「購買が頑張って特価まで獲得したそうだから安心したぜ。これで事業計画の中の採算計画は精度が高まった。やっぱり原料マターは購買に頼むのが一番だな。おれの指示は正しかったんだぜ。見積もりを取らんことには始まらんからねえ。よっしゃー」
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営業マンの陰の声:「それにしてもバッチリ行ったなあ。言葉は魔術とはよく言ったもんだ。実のところ、見積書は私の権限範囲内でちょちょっと作っただけなんだけど。限界だとか、特価だとか、ボスを説き伏せたとか、こう言うのは結構お客には効くキーワードなんだよねえ。まさか、よそのお客より高い見積もりになっているなんて分かりっこないもんね。えへへへ。まあ、この会社はこんな実力なんだから自業自得なんだよ。俺が悪いんじゃなくて、あいつらが馬鹿なだけだから。何年後かに多量販売になったときも、もう値下げの要求は出てこんだろう。なんせ特価なんだからね。後は期を見て値上げを考えることにするかな。研究の柴田さんの弱みも分かっていることだしね。うちから買うしかないって感じだったからね。それにしてもべらべらと平気で買い手の弱みをしゃべってくれる奴だったなあ」
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こんな情景があなたの職場でもありませんか?
売り手は高い価格でちゃっかり売っている。
ところが、買い手は最も安く買っていると信じ切っている。まるで催眠術に掛かったように思い込んでしまっている。
これは、どこでも見かける景色なんです。
ちょっと経験を積んだ購買マンの口癖は何か知っていますか?
「俺は最安値で買っている!!」と。
でも、冷静に考えてみてください。本当ですか?
どうして、あなただけ(ここが重要!)、最安値が獲得できるんですかね?
1)あなたの会社は、世界一の購買力を持っているから?
2)あなたは、世界一の購買能力・交渉能力を持っているから?
3)あなたは、世界中を探して最安値を追求したから?
4)売り手は、あなたとあなたの会社を世界中で最も重要な取引先と位置づけているから?どうしても最も安く販売しなければならないと思っているから?
これにYESと言う人がいたら私に教えてください。すごいですねえー。
だから、あなたは錯覚させられているだけなんではないでしょうか?一時も早く目を覚ます必要がありませんか?
あなたのこの認識は、実は、会社に永久的な損害を及ぼしているかも知れませんよ。
では、どうしてこうなってしまうのでしょうか?
あなたは、上記の会話の中から問題を一杯見つけ出せますよね。それを纏めるときっと本質的な課題に行く着くと思いますよ。
では、今回はここまで。
【今日の名言】
情報が多ければ判断が楽というものではない。
クラウゼウィッツ
次回は、【なぜ買うのか?】の2回目、です。
編集後記)
今日から10月ですね。秋雨前線のお陰で、ようやく秋になりそうな予感がします。それにしても今年の夏は暑かったですねえ。早く疲れを取りましょう。
さて、今回の写真は、鳥の「あおさぎ」です。間違って漢字変換して見たらなんと「青詐欺」と出ました。(恐ろしいねえ)
明石公園北側の一角にある池(豪の池と呼ばれています。公園内で最も桜の美しい場所です)の近くを散歩していて、携帯カメラに納めちゃいました。
明石公園は城址ですから、城壁とお堀に囲まれているのですが、周囲のこんもりした森の木々で上でよく見かけます。数え切れないほど住んでいますが、このあおさぎ君はその仲間ということになります。
ここでクイズです。この鳥の鳴き声は知っていますか?(写真の下に答え)
川原でも、魚を狙って石のように固まってじっと待ち構えているのをよく見かけます。だから撮影するには苦労はしません。この鳥なシャッターチャンスと言う言葉はいりません。だからグズの私でも、ほれ、この通りでした。
まあ、この鳥の我慢強さには感心させられます。私とにらめっこしていたのですが、5分でも10分でもじっとしているんです。狙いの魚を見定めて、自分を自然の中に見事に溶け込ませるんです。生き物のオーラを見すっかり消してしまうのでしょうね。そして、やがて魚をガブリッとやるんです。
ひょっとしてこのねちっこく狙いを定める習性が「詐欺」と言われる所以なのかも?でも、聞こえは悪いですが、これでも立派な鳥なんですね。魚を狙うのは生活掛かっているんでしょうからねえ。
まあ、元来は短気な私なので、この忍耐力に負けないように、コツコツと一歩ずつ焦らずに生きていきますです。はい。
(答え)「ゴアー!」。なかなか聞けないですけど。